Solo exhibition
Guardians
Exhibition of new works.
Fifteen panel works and six drawings will be exhibited.
April 11 - 23, 2024
Jomyoji, Kamakura, Kanagawa, Japan
Media Coverage:PR TIMES
作家ステートメント
古美術と自作について
Artist Statement
There is a sense in which I view the present as the past.
I feel as if I am living in the present but looking at it from the future.
Every object seems to be a relic of the world.
People and things are closely related. There is no one who does not have things.
Eventually, people will die and only things will remain. Only objects tell something for what is gone.
History, memories, and remembrances prove that they were indeed there.
About Antique Art and My Own Work
The title of this exhibition is "Guardians".
Guardian means guardian, protector, or custodian, and for me it refers to "things.
People live their lives forgetting something and remembering something.
Even after we leave the world, we live in that person's world if another person reminds us.
The world is made up of a nested structure of forgetting, being forgotten, remembering, and being reminded.
What is needed for remembering is "things. There is no human being who does not have things.
Objects prove and protect that history, events, memories, and remembrances were indeed there.
As guardians.
Antiques are guardians of the history that people lived in the past.
Stuffed animals are guardians of childhood.
Airplanes are guardians of engineering developments and challenges.
Objects help us remember.
Just as antiquities keep the breath of the people of that time alive,
Today, all objects in front of us now are Guardians.
展覧会概要
ギャラリー・Quadrivium Ostiumは、若手アーティストと、ギャラリーの古美術コレクションからインスパイアされた現代アート作品を展示販売する企画展覧会を開催しています。企画はアーティストがギャラリー空間を体感し古美術コレクションを鑑賞することから始まり、アーティストの世界観を尊重しつつテーマを考察していきます。江波戸陽子の個展は、昨年2023年に開催した「こちら未来」に続いて2回目となります。
江波戸陽子は、「人」と「物」の密接な関係について考察し、未来を起点として今を「過去」とみなす視点から「物」の存在を作品に転写する作家です。未来に残された「物」が語る物語を描き留め、かつて在って今は亡き存在を証明しようとします。
作品「お気に入り」に描かれている物たちは、おなじみのメーカーの醬油差しやオマケのグッズ、外国の土産物など日常で目にする身近にあるものです。これらの物たちは、意思や意図を持たずにただそこに集められ置かれており静寂の中での孤独が伝わります。この江波戸作品に常在する孤独とは、現在の時間を越えた終わりについての思考の顕れであり「物」は有限性の基点の記号として存在しています。
ガーディアン(Guardian)とは、「守護者」「保護者」「管理者」の意味を持ちます。江波戸は、時の流れの中で「今、存在するもの」と「かつて存在していたもの」の間をつなぐのは「思い出」であり、この世界は思い出と忘却が入れ子構造のように重なり合って出来ていると考えます。(以下『』は江波戸陽子の言葉)
『人間は何かを忘れ何かを思い出しながら生きています。
世界から去った後も、他の人間に思い出されたらその人間の世界で生きています。
忘れる、忘れられる、思い出す、思い出されるが入れ子構造のように重なり合って
世界が出来ています』
そして、両者の間をつなぐのが遺された「物」たちであり、
「物」は「歴史、出来事、記憶、思い出」の守護者とみなします。
『思い出すために必要なのは「物」です。物を持たない人間はいません。
歴史、出来事、記憶、思い出が確かにそこにあったことを、物は証明し守っています。
ガーディアンとして。』
だれでも「これを見ると思い出す」物やどうしても捨てられない大切な思い出の品があることでしょう。江波戸はこれらの物たちに、過去を守り今につなぐ守護者の役割を与えます。
古美術と江波戸作品
ギャラリーQuadriviumOstiumは様々な地域、時代の古美術コレクションを保有しています。
本展覧会では、ギャラリーの古美術コレクションと江波戸作品を並置展示します。
何百年も残り続けている古美術は、造られた時代から永い時を引き継いできた人々の記憶のガーディアンであるともいえます。
『古美術品は過去の人間が生きた歴史のガーディアン。
ぬいぐるみは子ども時代のガーディアン。
飛行機は工学の発展と挑戦のガーディアン。
物があれば思い出せる。
古美術品が当時の人々の息遣いを守り続けているように、
今日、今、目の前にあるすべての物はガーディアンです。』
作品「ヒコーキ野郎」は、強い意志を持つ瞳を持ち、固い金属の塊というよりトビウオのような生命力が伝わります。ガーディアンとしての「ヒコーキ野郎」は、物のこわばった不変性をこわし「発展と挑戦」の歴史の記憶のガーディアンとして新たな文脈を生み出します。
モノクローム描写の探求
今回の展覧会の出品作品は全てモノクローム作品で、パネルに和紙を貼り、鉛筆やカーボン紙、銅版画用のインクで描かれています。
江波戸は、モノクロームは自身の心の在りようと重なり「静かで遠い感じ」が気に入っていると話します。そして、モノクロームで描くにあたり、最も重要な要素は絵の骨格となる構図であると述べています。その理由として、モノクローム描写が、人間で例えると服をきていないそのままの状態と同じで、色みやマチエールでの誤魔化しが効かないからだとします。また、無駄のないバルール※をとことん探求することで、描写は更に鮮やかな強度のあるものとなり、ぬいぐるみの毛の一本一本、影に反射する光の粒子まで見通せるように見えます。モノクローム描写への飽くなき探求は江波戸作品の真骨頂を生み出していると言えるでしょう。
※バルールとは絵画における色と空間との関わり合いのことで、色の遠近法のようなものです。色には明るさ・鮮やかさ・色みの3要素があり、モノクロームは明るさと鮮やかさで成り立っています。
江波戸は、見る人の胸を打つ「胸がいっぱいになる絵」を描きたいと語ります。今回の展覧会は、モノクローム描写を探求した新しい挑戦の成果の集成です。ガーディアンズ(守護者たち)がモノクロームの静謐な時空を漂う江波戸陽子の最新の世界を是非ご高覧ください。